金曜日, 10月 30, 2020

2つのJORDAN WATTS社

英国のオーディオ資料を調べていてJORDAN WATTSは、異なる2つの会社が存在していた事がわかりました。

1963年にGOODMANSに在籍していたエンジニアのEdward James Jordan氏とLeslie Watts氏の二人によって設立されたJORDAN-WATTS LIMITED。有名なMODULE UNITとそれを使用したスピーカーシステムを製造販売していたメーカーです。この会社は1978年にCLOSEしているとの事です。LINK先はE.J.JORDAN DESIGNのWebpage。JORDAN氏の最後のビジネスパートナーで、現E.J.JORDAN DESIGN代表のCOLIN氏の記述なので、信憑性は高いと思います。

もう一つのJORDAN WATTS社は、1990年頃に設立されて1998年まで活動していたJORDAN WATTS ACOUSTIC LIMITED。この会社は前述のJORDAN氏がE.J.Jordan Design名義で立ち上げた会社で製造販売していたJORDAN JXシリーズを使用したスピーカーシステムを販売していた会社です。日本でJORDAN WATTSの輸入代理店だった今井商事からもJX92に似たユニット(センターキャップの形状が若干異なる)を使用したJH200、JX53+JX125の2WAYに見えるJH1000が輸入販売されていました。

ここで疑問となるのが、JORDAN-WATTS MODULEユニットの流通に関してです。JORDAN-WATTSと言えば、壺のスピーカー FLAGONが有名ですが、私は1998年の輸入オーディオショウで後期型のアルミダイキャスト製のフラゴンが展示されているのを見ており、少なくともその頃まではMODULEは製造され日本国内で新品が流通していたことになります。秋葉原のヒノオーディオでもユニットを販売していたのを覚えていますし、このころに発売されたステレオサウンド別冊のスピーカーユニットを扱う書籍でもMODULEは紹介されていました。


JORDAN-WATTS社が1978年に活動を止めているのになぜ?と、疑問に思いましたが、複数の関係者にお話をお伺いしたところ、JORDAN-WATTSの商標(と製造治具)はLeslie Watts氏の引退後も持ち主が変わり、製造が続いた様です。とはいえ、1978年の時点では、Leslie Watts氏がMODULE UNITの製造に関わっていたのは間違いない様で、1978年にJORDAN-WATTS社が本当に無くなったかは良く解りませんでした。少なくとも日本側から見る限り、今まで通りWATTS氏を介してMODULEが輸入できていたようです。

JORDAN氏は時期ははっきりしませんが、比較的早くにJORDAN-WATTS LIMITEDを辞めて、1975年に現在のE.J.JORDAN DESIGNの元となる会社を設立しています。当初は50mm moduleと呼ばれる2インチフルレンジスピーカーを製造販売していました。特性が良く、オーディオ用だけでなく、電話機の試験用にも使われたそうです。のちのJX53のベースになった製品です。日本ではラジオ技術社が輸入していた様です。

1995年にJXシリーズのメタルコーンフルレンジスピーカーを発表します。(写真は何かのイベントのヒノオーディオの出展)

1981年のWIRELESSWORLD誌 WILMSLOW AUDIO社の通販広告で、JORDAN WATTS MODLE, MODULE MK3, JORDAN 50mm UNITが併記されているものを見つけました。MK2とMK3の併売時期があるのも驚きましたが、JORDAN-WATTS LIMITEDが1978年に活動停止したのが事実であれば、MK2は流通在庫、MK3はJORDAN-WATTSの商標を持つ新体制で作られたものが同時に流通していたのかもしれません。50mm UNITは上記の通り、E.J.JORDAN DESIGNの製品ですが、当時はJORDAN社と呼称されていた様です。

E.J.JORDAN DESIGNは、Esoteric Audio Reserch社との協業、生産体制の幾つかの変化、2016年のJORDAN氏の逝去もありましたが、フルレンジスピーカーEIKONA2を製造販売しています。

http://www.ejjordan.co.uk/


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